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中小規模の海外現地法人にERPは必要ですか?【前編】

目次

 Ⅰ. 業務ソフトウェア導入を検討するタイミングは?

Ⅱ. 業務ソフトウェアをモジュール単位で区分すると?

(以下、後編に続きます。)

Ⅲ. ERPを導入する際のハードルとは?

Ⅳ. ERPは必要ですか?

 

I. 業務ソフトウェアの導入を検討するタイミングは?

 

弊社のサービスメニューには、海外現地法人の管理部門が担う業務の受託があります。この業務を開始するに当たり、まずは社内ワークフローの全体像を理解して、会社と弊社の各担当者が合理的な業務分担と情報共有について十分に話し合います。その過程で、次のような属人的または非効率な作業を発見した場合には、それを解消するための業務用ソフトウェア(およびハードウェア)導入を提案することがあります。

  1. 標準化できる(すべき)と考えられるのに、特定の個人しか分からない。
  2. 手作業を含めて、特定部分に著しく時間を掛けている。
  3. 二重のデータ入力が生じている。

なお、これらの状況は、決して海外現地法人に特有の問題ではなく、日本本社(関連会社)にも生じる可能性は有ります。しかし、日本と異なる言語や商習慣のため、内部統制の欠陥の特定と解決には、日本国内での対応に比べて時間とコストが掛かり、長期間に亘り存在するケースが見られます。

 

II. 業務ソフトウェアをモジュール単位で区分すると? 

 

社内業務を支援するソフトウェアは、モジュール単位で大きく分類すると、単一モジュールと複数の連携するモジュールに分けられます。

 

前者の例には、経理部が使用する財務会計ソフトウェアが有ります。これは事業規模に係わらず、多くの会社が導入しています。なお、近年は財務会計ソフトウェアとは言え、売上インボイスの発行、仕入請求書の登録、棚卸資産の入出庫記録、インターネットバンキングからの取引履歴の取り込みができ、これらに関連する仕訳の自動作成機能が備わっているものが有ります。さらにクラウドタイプの選択肢が増え、出先からPC、タブレットやスマートフォンを使ってデータへのアクセスが可能です。ここまでデータ生成に連携する周辺業務の機能範囲が拡張していると、必ずしも単一モジュールとは言い切れないかも知れませんが、このソフトウェアは財務諸表を作成することを主目的としています。

 

後者の例は、ERP(Enterprise Resource Planning)です。これは受発注、プロジェクト進捗、在庫、生産、財務会計、給与、固定資産などの情報を一元管理するソフトウェアです。社内部門間のデータが自動的に連携することにより、データの整合性、重複排除、適時性、可視化を実現して、ワークフローの標準化を主目的としています。事例として、次のような状況においてERP導入を検討するケースがありました。

  1. 社内部門間の業務連携が不足している。
  2. 受注残を直ぐには把握できない。
  3. プロジェクト管理の強化を含めて、受発注と財務会計のデータ連動を実現したい。
  4. 多層構造のBOM(Bill of Material)表を管理したい。
  5. 事業の立ち上げ段階に、SKU(Stock Keeping Unit)の著しい増加と相当量の入出庫記録が見込まれて、担当者がエクセル等で管理する限界を超えることが懸念される。
  6. 原材料、製品の状況をタイムリーかつ詳細に把握したい。

(以下、後編に続きます。)

 

取材協力 Time Rise Engineering Ltd.

香港にて創業1989年以降、約30年にわたり現地日系企業へIT/業務サポートを提供。同社が開発したお客様のオペレーションにピッタリ合わせた業務システム(STEP Pro)では約160社への導入実績があります。

会社ホームページ http://www.tre.com.hk

(写真右より董事長 上野隆様、営業部副経理 穐山巧様)